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第三回:テーマ「私はこれで会社をダメにしましたー二条彪の失敗の理由」Vol.3
失敗の理由その1
「ほんとうは違うことをしたかったと思っていたので失敗しました」その3
※
Vol.2からの続き
前号では、事業継承にあたり創業者にやっておいてほしいことを私自身の経験から述べさせてもらった。いくつか上げたが、まだまだ
事前に創業者がやっておべきことはあるが、いったんそれは置いておいて、今号では、創業者から二代目へと視点を移してみたい。
■経営者と名のつく人で悩みがない人はいない。資金のことや人のことや情報化のことなどなど・・悩みの海の中で一人孤独に泳いで
いるという感覚かもしれない。中にはもうあきらめて漂流している人もいるかもしれない。
二代目経営者も同じように悩んでいるが二代目だけが持つ特殊な悩みもある。この二代目が持つ特殊な悩みの
原因はなんなのだろうか?どうして二代目は失敗しがちなのだろうか?
この原因は二代目が、「創業経営」と「二代目経営」は違うということを認識していないことにある。もっと言えば認識はして理解はしているけれども感情的に受け入れていないのである。さらには創業者自身がこの違いを理解していないことも原因である。
■では、「創業経営」とはなんであろうか。創業者はまさしく創業するわけであるから無から事業を立ち上げる。そこには苦労してまでも事業を興す強力な動機がある。何者も揺るがすことはできない確固とした動機で
ある。この世に自分の事業が必要とされているという社会的使命感でも
あり、創業の経営理念そのままといってもよいかもしれない。そしてこの動機を具体的な行動に導く強いエネルギーと強靭な肉体が必要となる。
創業者はまわりを圧倒するほどエネルギッシュだ。24時間仕事をしているのではないかと思えるほどパワフルで自分の全精力を創業につぎ込んでいる。
また創業者は他人では決して真似のできない独自の技術やノウハウを持っている。この独自性こそ創業者の武器である。独自性を持っているからこそ創業しようと決意したと言えるかもしれない。
そしてひとたび創業すれば、カリスマ性を持って組織をひっぱり事業を拡大していく。多少強引なこともあるだろう。しかし、それは創業者というカリスマ性でかき消され、またそれに見合った成果を出せる力を創業者は持っている。
そして創業者は道なき道を進み、岩盤に穴をあけ突き進み道を作っていく。そのあとにはかき分けた岩や土砂が散乱しているが、それを創業者の後についてきている部下たちがきれいに整地し舗装していくそんな経営が「創業経営」である。
■それに対して「二代目経営」とはなんであろうか。引き継いだ会社にはすでに創業者が作った立派な経営理念がある。鍛えぬかれた組織がある。会社文化もそこには根付いている。対外的な信用も確立されている。会社名を言えばすぐに面会してくれる得意先もある。掛売りでもニコニコして帰っていく取引先ばかりだ。銀行の支店長にもアポなしで会うことができる。
創業者が一から苦労し汗と知恵を絞って手に入れてきたものを二代目は簡単に手に入れることがで
きるのだ。そう二代目は創業者と同じような苦労はしなくていいのである。創業者から見れば、なんと恵まれた素晴らしい環境だろうと思いであろう。そう思うのは当然である。創業者はそれらを手にするためにどれだけの苦労をし、どれだけのものを犠牲にしてきたか・・・
しかし二代目から見れば、持たざる者も大変だろうけど持つ者だって大変なんだ、というのが本音だ。すべてが創業者イズムで統一された会社をどう自分のカラーに染めていけばいいのか、一
言で言えばこれを達成していくのが「二代目経営」であり、ここに二代目の悩みもある。
■二代目は多くの場合、すでに獲得されている経営資源をいかに活用していくか、そして自分色に染めていくかという「二代目経営」
を心がけなければならないのに、無から作り上げていくエネルギッシュな「創業経営」をしてしまう。であるから、当然無理が出て失敗をしてしまうのである。おそらく二代目が、自分が「創業経営」
をしているか「二代目経営」をしているか意識している人は少ないと思う(しかし私の知っている二代目に中にはきちんと意識し経営をしているクレバーな二代目も多数いる)。なにを隠そう私自身がそ
んなことは考えたこともなかった。会社を破産させ、反省をしてみてやっとわかったのである。
「無から作り上げていく創業者と人が作ったものを譲り受けていく二代目とは経営スタイルもその手法も違
っていていいのだ!」このことを理解し心から納得できれば、二代目が失敗することはまずないと考える。二代目経営を成功させる核心であると私は考えている。少なくとも違いを意識して経営をするだけでも肩の力が抜けて自然体で経営ができるのではないだろうか。
■よく、「創業者はハングリー精神があるけど、二代目はない」とか言われる。口の悪い方は「ぼんぼんだからねぇ」と付け加えたりす
る。私自身もいろいろな方々からこのような厳しいお言葉を頂戴した。そのたびに自分自身でなんとかハングリー精神を持とう!と気合を入れていたのを懐かしく思う。今思えばそのような力みこそが
失敗する原因だったとわかる。
しかしハングリーじゃない、とか創業者とは違うね、と比較されるとどうしても二代目は力んでしまうものである。
■このハングリー精神であるが、二代目といえどもやはりまったくないと腑抜けのような経営になってしまう。しかし、二代目に必要なのは創業者のようなハングリー精神ではない。やはりここでも二代目のハングリー精神なるものがあり、きちんと区別しなければいけないと思う。
■二代目は創業者のような強引な経営スタイルをとる必要はない。
創業者と同じようなハングリー精神も不要である。無から作り上げるような強力なハングリー精神を持つことは二代目には大変危険であると思う。
そのような創業者のハングリー精神を持つと創業者と違うなにかをやってやろうとか、超えて見せるんだというような、過剰な動機となって二代目経営を誤らせてしまう。二代目が失敗するケースはだいたいこの場合である。私もそうであった。
しかし、二代目にはハングリー精神はいらないということではない。
二代目には二代目用のハングリー精神が必要ということだ。二代目にはある程度完成された会社がある(好むか好まないかは別として)。であるから無から作り上げる創業者のハングリー精神ではなく、二代目のためのハングリー精神が必要なのである。
では、二代目のハングリー精神とはなんであろうか?一言で言えば
「クールなハングリー精神」とでも言えるであろう。これは、ハングリー精神を抑えて今の会社の資源を大切にし守りに入ろうということではなく、また何か違うことをでっかくやってやろう、という脂ぎったハングリー精神でももちろんない。何かを成し遂げようという前向きな気持ちを持ちつつ、ギラギラしない「クールなハング
リー精神」が二代目のハングリー精神である。
創業者のハングリー精神と二代目のハングリー精神を区別して「クールな二代目」になることが失敗しない方法の一つである。私は「ホットな二代目」に
なってしまい失敗してしまったのである。
■二代目が失敗しがちなのは、「創業経営」と「二代目経営」を区別し心からそれを理解していないことだと述べた。しかし、そんなことは経営指南書にも書いてあるし、知っているという方々も多いと思う。また、それはわかっているがそんな悠長なことも言っていられない状況で第二創業をしなければいけないんだ、というご意見もあるだろう。さらにはわかっていてもどうしても創業者と自分を比べて力んでしまう、という方もいるだろう。
「創業と守成」を心から理解するとはどういうことなのか?心から理解とは?・・・・・・
しかし、これを知らなければ昨日の経営と今日の経営を変えることはできない。そしてこの命題に答えるには、なぜ自分は創業者と比べてしまうのか、なぜ二代目として手柄を立てようと力んでしまうのか、という、もう少し心の深いところに入らざるを得ない。そこには劣等感やコンプレックスや防衛的反応があるのかもしれない。
■うまく経営できない経営者は自己不一致状態であることが多い。
これは経営者に限らず、管理職や一般の社員、また普段の生活面でもうまく人間関係を作れない人はこの自己不一致であることが多い。
ここでは二代目ということに絞って考えてみるが、二代目にとってもこの自己不一致の状態は良くない状態である。
この状態であれば、「創業と守成」を心から理解できないし、創業者と自分をいつまでも比較してしまうし、手柄を立てようといつまでたっても力んで仕
事をしてしまう。
■この自己不一致とはなんなのか?また自己一致とはなんなのか?
経営者にとって経営をしていく上でとても重要な回答がそこにはある。「自己一致」はすべてのマネジメント手法を凌駕し、それを知ることは経営者としての本質を問うことになる。しかし成功している経営者がみな「自己一致」している事実をみれば、やはり経営者として、この問題から目をそむけることはできない。
創刊して4号目で早くもこのような本質に触れていいのか、と多少悩んでいるが、次号からはこの「自己一致」について深く考えてみたいと思う。
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| 著者 二条彪 |
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二条彪(にじょうたけし)略歴
昭和36年生 40歳
大学卒業後某レコード会社入社
昭和60年実父逝去にともない、年商15億、店舗数15店舗、従業員数70名の婦人服小売チェーンを継ぐ。平成12年同社の破産まで16年間代表取締役として経営を行なう。上記会社経営の間に、アパレル会社など2社の起業と清算廃業を経験する。平成13年中小企業のお助けマンとなるべくアルファルファ・コンサルティングを開業。
資格 経済産業大臣認定 中小企業診断士
厚生労働大臣認定 初級産業カウンセラー |
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